共感マップ

起業を志したとき、多くの人が「市場調査」や「データ分析」という難しい言葉に身構えてしまいます。
「数字や統計を読み解かないと、ビジネスは始められないのではないか」と不安に思う必要はありません。

ビジネスでデータはとても必要ですが、そうしたデータだけでは見えにくい「一人の困っている人」にどこまで寄り添えるかです。

今回は、難しい分析が苦手な方にこそ使ってほしい、顧客の心の中を整理するツール「共感マップ(エンパシーマップ)」をご紹介します。

教科書通りの使い方にとどまらず、顧客への理解を深める「be起業流」の活用法をお伝えします。

共感マップとは?:顧客の「心」を映し出す鏡

「共感マップ」とは、あなたがサービスを届けたい顧客(ターゲット)が、普段どんなものを見て、聴いて、何を考えて行動しているのかを、1枚のシートに洗い出して整理するマーケティングのフレームワークです。

ビジネスのアイデアを考えるとき、私たちはどうしても「自分たちの売りたいもの」を基準に考えてしまいがちです。しかし、それでは顧客の心に響くサービスは生まれません。

共感マップを使うことで、自分自身の視点を一度リセットし、「顧客の立場になって世界を見る」ことができるようになります。

なぜ今、共感マップなのか? ——「be起業流」のスタンス

一般的なマーケティングでは、共感マップを「効率よく売るためのターゲット分析ツール」として使います。
しかし、私たち「be起業流」のアプローチは少し違います。

私たちは、共感マップを「顧客への理解と共感を育むための設計図」だと考えています。

初めて起業する方が、大企業のような莫大な資金やデータで勝負するのは簡単ではありません。
起業家が活かすべき強みは、「目の前の人の痛みを丁寧に理解し、寄り添えること」にあります。

データ上の「30代女性」という記号ではなく、「毎日仕事と育児に追われて、夜ベッドに入ると、ふとため息をついてしまう、あの人」という生身の人間として捉えること。
このアプローチこそが、be起業流の基本です。

共感マップを構成する「6つの要素」

共感マップは、顧客の頭の周りにある「4つの環境要素」と、その根底にある「2つの本音(Pain/Gain)」の、合計6つの要素で構成されています。

一つずつ分かりやすく解説します。

1. 見ていること(See)

顧客の日常生活で、目に入っている風景や環境です。

  • 例: 通勤電車の満員状態、スマホのSNSに流れてくる同世代の活躍、片付かない部屋など。

2. 聞いていること(Hear)

顧客の耳に入ってくる言葉や、周囲からの影響です。

  • 例: 上司からの「もっと成果を出して」という言葉、家族からの「最近疲れてない?」という心配、友人が話す流行りの趣味など。

3. 考えていること・感じていること(Think & Feel)

顧客の心の中のつぶやきや、本当に大切にしている価値観です。

  • 例: 「このままでいいのだろうか」という将来への焦り、「本当はもっと家族との時間がほしい」という願いなど。

4. 言っていること・行っていること(Say & Do)

顧客が周囲に対して実際に取っている態度や、発している言葉です。

  • 例: 職場では「大丈夫です」と無理して笑顔を作る、夜遅くにSNSで「癒やし グッズ」と検索するなど。

最も重要なポイント:「Pain(痛み)」と「Gain(望み)」

4つの環境要素を埋めたら、いよいよ顧客の深い本音である「Pain」と「Gain」に耳を傾けます。ここがビジネスのアイデアを生み出す一番の源泉になります。

5. 痛み・悩み(Pain)

顧客が日々感じているストレス、不安、不満、障害のことです。 ビジネスとは、一言で言えば「顧客のPainを解決すること」です。ここが具体的であればあるほど、喜ばれるサービスが作れます。

  • 例: 朝起きるのがとにかく辛い、自分のためにお金や時間を使うことに罪悪感がある、失敗して恥をかきたくない。

6. 望み・理想(Gain)

顧客が本当に手に入れたい理想の姿、成功、得られるメリットのことです。 ここを満たしてあげることで、顧客はあなたのサービスに価値を感じます。

  • 例: 朝、スッキリと笑顔で目覚めたい、自分の可能性を信じて新しい一歩を踏み出したい、心から安心できる居場所がほしい。

結果的に顧客が価値として受け入れるのはこのPainとGainです。しかしそのうち、顧客の課題を解決するのがPainの解消であることは、ビジネスを考える時にもっとも重要な視点です。

どうしてもGainを中心に考えがちですが、「Nica to have(あったらいいな)」になりがちです。
Painは痛みであり早く解消した対象でありますから「Must have(なくてはならないもの)」です。

ですからまず、起業家として顧客の課題解決では、Painを中心に設計をしていきましょう。

※応用編「裏Gainは本音」

ただし、本当の意味での望み(自己実現ベネフィット)としては、Painの背景にある顧客本人が言葉では言い表しづらい本音の「裏Gain」です。

人は本来、自信の自己実現欲求を満たしたいことが底辺にあり、その実現を達成したいにも関わらず、Painによってそれを阻んでいるのです。

ですから、表面的なGainは「あったらいいな」になりがちですし、実際にはそこを商品化してもマネタイズに繋がることは少ないかもしれません。
しかし、マーケティングとしてあるいは商品の本質を追究していく上では、この裏Gainの存在は重要であることを忘れてはいけません。

初めてでもできる!共感マップ作成の3ステップ

まずはノートと付箋を用意して、次の3ステップで始めてみましょう。

  • ステップ1:たった一人の「実在する誰か」を思い浮かべる 架空の人物を作るのが難しければ、あなたの過去の友人や、家族、あるいは「数年前のあなた自身」でも構いません。特定の誰かを思い浮かべることで、共感しやすくなります。
  • ステップ2:付箋に書き出して貼る 「こんなことで悩んでいそうだな」「こんな景色を見ていそうだな」と思うことを、1つの付箋に1アイデアずつ書き、6つのエリアに貼っていきます。正解・不正解はありません。相手の状況を想像しながら書き出してみることが大切です。
  • ステップ3:PainとGainのつながりを見る 最後に、書き出した「痛み(Pain)」の裏側にある「本当の理想(Gain)」を眺めます。「〇〇という痛みを抱えているからこそ、本当は〇〇という未来を望んでいる」と、一本の線でつながった瞬間、ビジネスのアイデア(=どうやって解決するか)が見えてきます。

ひとりで考えているだけでは客観性が生まれませんし、バリエーションも広がりません。ぜひいろいろな方と一緒に顧客像を話し合いながら洗い出していくことをオススメします。

まとめ:あなたの「共感」が、ビジネスの原点になる

マーケティングのフレームワークと聞くと、冷たくて機械的なイメージを持つかもしれません。しかし、共感マップは、顧客の視点に立ち、困りごとを深く理解するためのステップです。

数字の分析に苦手意識があっても問題ありません。初めてビジネスに挑戦するからこそ持てる「目の前の人をサポートしたい」という気持ちを、この共感マップに詰め込んでみてください。

まずは1枚、あなたが力になりたい誰かを思い浮かべて、その人の心の中をそっと整理してみましょう。

beスタイル起業では、あなたの起業の一歩を応援しています。